そして、「そのきっかけが知りたい」と、あめさんは私に告げる。


きっかけなんて、そんな事を聞かれたのは初めてだった。


"生まれ持った性格だから”


今まで一度もそんな事を言った覚えは無い。しかし大抵の人がそう受け止めて、それ以上の事は尋ねてこない。そして、その人の中で "人助けが好きな、お人良しな人”としての私が形成されていく。

いつもそうだし、それに対して悪く思った事は一度も無かった。でもきっかけは、私の原点。私の全て。

もしかしたら、あめさんは私に気づいたのかもしれない。本当は大きく矛盾している、私の中身に。


「きっかけ、ですか」


そう呟いた私に、あめさんは小さく頷く。

それを聞いてどうするつもりなのだろうか。あめさんが知りたいと思った理由は分からない。
それでも、今は私の話をしようと思った。知って貰わなければと思っていたのに、いつの間にか知って貰いたいに変わっていたのかもしれない。


「…私のコレは母親譲りなんです」


そして私は、ゆっくりと過去を振り返る。


「私が母の娘だっていう、証明なんです」


それはまだ誰にも話した事の無い、私の経歴。