遠慮がちに開かれた扉から現れたのは、声の主である彼。いつも通りの綺麗な金髪は健在で、私の目は久しぶりのその色にとても惹かれた。

この色は彼にピッタリだ。まるで生まれた時から持ち合わせているみたいに、彼にしっくりきている。髪色が金という事が彼のアイデンティティの一つとされても、それに対して私は大きく頷けるだろうと思う。


すっかり久しぶりの彼に目が離せなくなっていると、俯き加減だった彼がふと顔を上げる。

そうする事で私達の目が合うって事を分かっていたみたいで、彼は、私の存在を確認するかのようにじっとこちらを見つめて来た。


私は戸惑う…というか、なんだろう。焦燥感?心拍数が上がって、ぎゅっと心臓が握られたような、困惑してるのに、嬉しくて、でも逃げ出したくて…それを、この場に引き止められるように、足は固まって動かない。目もそらせない。

彼の目には、何か力があるみたい。いつになったら彼の視線に慣れるんだろうと、目が合っている、目の前のあめさんに思う。


その時のあめさんは、どこか複雑な表情をしていた。そんな彼が、「どうぞ」と言ってくれるので、私は促されるままに部屋へと足を踏み入れた。


案内されたのは、中央にテーブルとソファが置かれたリビンク。ソファに座った私にアイスコーヒーを出してくれて、同様に、あめさんも向かい側のソファに腰を下ろした。

そして止まった、私達の動きと時間。


…そろそろだ、言うしかない。


「あの、あめさん」


思い切って話を切り出した私に、あめさんは「うん?」と、いつも通りの返事をする。