国道で青いスポーツカーが、急カーブを切って反対車線へと移った。後ろからクラクションが鳴らされるが、宮橋は気にも留めず一気にアクセルを踏み込む。

 ぐんっと加速感がした。雪弥は、助手席で揺られたのちに、こう言った。

「それ、もっと他に言葉があった気がします」
「君の気のせいだ。せっかくの現役の軍人だ、なら僕が使ってやろうじゃないか」
「はぁ。国家の、というのなら宮橋さんも同じ立場では」
「馬鹿言え、君、月にいくらもらっていると思っているんだ」

 雪弥は、そう言葉を投げられて不意に、やや間を置く。

「――いくらでしょうね」

 今更のように、ちょっと真剣な顔で顎に手をあてて考える。その隣の運転席でハンドルを握っている宮橋は、呆れた表情だ。

「君、ここ一番で真剣な表情だぞ。年上の先輩としてアドバイスしておく、数字はきちんと把握していた方がいい」
「はぁ、すみません。どうせ殉職したら使いようもありませんし。食べて、寝られるとこがあればいいかなって」