時々、容姿端麗で空気を読まない目立つ存在であるのに、どこにいてもふと忘れ去られる瞬間がある。黙って座っていると、まるで空気のように希薄になって、いつのまにかどこかへふらりと行ってしまう事も多かった。

 そんな宮橋が「お、第四現場か」と、藤堂の間に割り込んでテーブルを覗き込んだ。隣にいた三鬼が、眉を寄せて「おいコラ」と文句を言いかけた時、開かれた扉から一人の女性が飛び込んできた。全速力で走った彼女の髪は、少々乱れている。

 新しい捜査員の帰還を見て、室内の視線がそちらへと向いた。捜査の真っただ中で、覚えたての顔に「おかえり」と声をかけつつも、そもそも彼女が宮橋の相棒である事を思い出すのに数十秒を要する人間もいた。

「もう、どうして置いていくんですか!」

 タイトスカートいっぱいに足を広げたまま、真由は肩で荒々しく呼吸を繰り返しながら、息も絶え絶えに言った。一同よりも最後に視線を上げた宮橋は、どかどかと歩いてくる彼女を見ると、真面目な顔をしてこう告げる。