「被害者たちのグループのメンバーと、中学生の頃から彼らに苛められているという少年が判明して、事情聴取する方針で全員探しているらしい。僕らも、一旦署に戻るぞ」
「あの、さっきN高校の一年生の『ヨタク』がキーマンで、四人目の被害者が出ている頃だと言っていましたが、一体、何がどうなっているんですか……?」

 推理力や考察力が追い付かないせいで、こんなにも自分だけが何も分からないでいるのだろうかと思って、真由は戸惑いを覚えて尋ねた。

 宮橋が不意に足を止めた。こちらを真っ直ぐ見下ろして口を開きかけた彼の目が、わずかに細められて唇が引き結ばれた。明るい茶色の瞳に切なさが過ぎって、まるで置いて行かれた子供みたいに見えた。

「宮橋さん……? どうしたんですか?」

 思わず呼び掛けたら、彼が質問は受け付けないと言わんばかりに視線をそらして「――行こう。時間がない」と歩き出した。初めて見た直前の彼の表情に、それ以上の質問も躊躇われて、真由は黙って隣に並んだ。

 初対面の時に『質問はするな』と前もってつっぱねられていた事が思い出されて、はっきり語られないもやもやとした現状への苛立ちは、自分の方が悪かったのかもしれないという一方的な反省に変わっていた。

 あの時は、なんて自分勝手な人なんだろうと頭にきたのに、意気揚々とハンドルを握って、駄菓子一つで楽しそうに笑い、大事だから手帳は君が持っていてくれと当然のように預けていた彼を、なんだか悪く思う事は出来そうになかった。

 こんなにも短時間のうちに、連続して少年たちが惨殺される現実が信じられない。分からない事だらけが頭に溢れ返って、ただ傾きだした太陽に伸びる影を目に留めていた。