「すみません、ちょっとしたジョークが口から飛び出たのは認めます。ほんと吐きそうで苛々するし事故るんじゃないかって心臓も痛くて、胃もキリキリします」
「先程から思っていたが、君は子供みたいに素直なところがあるな。吐くなら外に吐け」
「だから、あんたは鬼ですか」

 苛々して本人に直接それを伝えた真由は、不意に、サイドミラーに何か映りこんだような気がして目を向けた。確認しようとした直前、車が勢いよく車線変更してしまいタイミングを逃した。

 黄色いスポーツカーは、走行車の少ない陸橋の中腹を越え、勢いをそのままに坂道を下り始めていた。道路に危険な障害物が落ちていたか、危うい運転をする車かバイクを回避したような荒々しさがあったが、見回す限りそこは走行車の少ない見晴らしの良い陸橋の上でしかなかった。

 横を走っていたトラックが、車線変更のウィンカーを入れてこちらの方に迫ってきた。真由は「えっ、こっちが見えてないの!?」と、思わず飛び上がってしまった。今は捜査中であるし、こんなところで巻き込み事故には遭いたくない。