県立図書館の場所を知っていた真由は、つい遠く離れて行く国道を見やってしまった。

「あれ? 宮橋さん、ここだと県立図書館から逆方向ですけど」
「質問は一切受け付けない。ここから一番近い県立図書館へ行かなければならないが、今は駄目だ」

 宮橋は冷静な表情ながらも、獲物を射る鷹のようにミラーで後方の様子を確認し、車を飛ばした。

 短い間に右へ左へと荒々しく進路変更されて、真由は目が回りそうになりながらも、吐き気を堪えて流れていく風景に目を向けた。車はいつの間にか、陸橋のある国道のへと入っていて、大きな橋の上を滑るように走行していた。

 北向け、南向けのどちらも二車線からなっている広い道路である。端の第二車線を走行する宮橋の車からは、陸橋のフェンスの向こうに県警を構える都心の一部が臨めた。

「うわぁ、ここって結構有名なスポットですけど……まさかのデードコースですか、宮橋さん」
「ほぉ。君はそんなに、ガムテープで口を縛り付けられたいか」