「なんだか、車が多いですね」

 真由は、沈黙という状況も慣れなくて、何気なくそう呟いた。

 興味もなさそうに「今の時間はこんなものだろう」と返した直後、宮橋の整った眉がわずかにぴくりと動いた。そして、何も言わず、唐突に咄嗟に避けるようにして彼はハンドルを切っていた。

 前触れもない進路変更に驚いて、真由は何事かと思って彼の横顔に目を留めた。また乱暴な運転になるんじゃないかと身構えてすぐ、車は道の脇にそれて、通りにあったブランド店の駐車場に滑り込んで一旦停車した。

「もう、びっくりしましたよ、突然なんですか? 出来れば急に進行方向を変える前に、知らせてくれると助かります」

 そう言って睨みかけたところで、宮橋の横顔が真剣な様子である事に気付いて、真由は言葉を切った。サイドミラーを見やっていた彼が、車を駐車場内へとゆるやかに進め、『通り抜け禁止』と書かれた看板を越えて反対側の商店街道路に出た。

「……あの、どうしたんですか?」