「実は、我々も『彼』の扱いには困っている。これまで色々なパートナーをあてがってきたが、どれも数週間ももたなかった。早い時は数日も待たず、中には、たった数時間で――」
「ちょっと待ってください。『彼』って?」
「L事件特別捜査係で、ただ一人の捜査員だ」

 小楠は途端に、むっつりと唇をへの字に曲げた。質問の多い奴だな、と言わんばかりの顔である。

 対する真由は、片眉をつり上げた。どうにも胡散臭い話だ。腑に落ちない事は多々あり、「そもそも」と彼女は上司となった彼に問うた。

「それって、まるで彼のために作ったみたいに聞こえるんですが」
「まさにその通りだ。上層部と私の判断で、十年ほど前に立ち上げた。しかし、規則もあって一人で行動させるわけにもいかん。何しろ、奴の行動は未知数で――」
「えっ。つまり、私に彼の監視をさせるつもりですか?」

 また質問かよ、と再び言葉を遮られた小楠は、憮然として彼女を睨みつけた。