女店主は、宮橋の綺麗な顔をしばらく見つめた後、ちょっとだけ恥じらうように視線をそらして言葉を続けた。

「全然タイプの違う子が一人だけ混じっていたから、ちょっと気になったのよ。全然楽しそうじゃない様子だったし、もしかしたら何かあるのかしらって」
「同感です。あ、これください」

 そう言った宮橋が、いくつかの菓子をカウンターに置いた。真由は呆れながらも、顔には愛想笑いを浮かべて女店主に礼を言ったものの、彼女はほとんど彼を見ていて、特にこちらを注目する事もなかったのだった。


 昔ながらの菓子が入った袋を持った宮橋と共に店内を出たあと、真由は来た時と同じように駄菓子屋の引き戸を締めた。店内は、夏の熱気と湿気対策で冷房がかかっていたからだ。

 聞き込み作業は不得意ではないが、やはりやるたび緊張してしまう。駄菓子屋の前に出来た日陰に立っているはずなのに、まるで太陽の直射を受けているように暑い。蒸せるような空気を肺に吸い込んで、額にじわりと滲んだ汗を、ハンカチで拭って空を見上げた。

「しんどい暑さですね」

「楽しもうと思えば、いくらでも楽しめる暑さだ。砂漠はこんなものじゃないぞ」

 宮橋は袋の菓子を眺めながら、楽しそうに語った。