真由は「そうなんですか」と相槌を打ちながら、ちらりと後ろを見やる。こじんまりとした店内の入り口付近で、宮橋が物珍しそうに菓子を眺めて鼻歌をうたっていた。

「えぇと、他に何か覚えている事はありますか?」

 集中を戻すように尋ねてみると、女店主はふっくらとした皺の入った顔を歪めて、「どうだったかしら」と考える素振りで呟いた。後ろから、宮橋が「懐かしいなぁ」と独り言を口にしながら、いくつかの菓子を手に取る気配が気になった。

「そういえば、いつもその中心に、金髪で目立つ子がいたわね。人数はいつも違うのだけれど、その子は必ずいるのよ。そうそう、確か短い髪で眉が無い子だったわ。いつもその子の隣に、真面目そうな子が一人いたのを何度か見た事があるの」
「ほぉ。それは、とても特徴的な組み合わせですね」

 すると、すぐ後ろから声が上がって、真由はびっくりして振り返った。

 つい直前まで興味もなさそうにしていた宮橋が、いつの間にかこちらの真後ろに立っていて、長身の特権のように頭上から顔を覗かせていた。