「今回起こっている事件には、これまで以上に未知数だ。もしもの場合、また宮橋が指揮をとる事にな――」

 その時、室内に慌ただしく男たちが入ってきた。髪を振り乱してやってきた中年の男二人に、一体何事だと一同の視線が集まる中、小楠が全員を代表してそれを声にした。

 時刻は午後三時四十分だった。

 後ろの一人が入り口で足をとられて崩れ落ちるのも構わず、先に駆けこんだもう一人の大男が、息を切らしながら真っ直ぐに小楠を見つめて、こう叫んだ。
「四人目のバラバラ死体が上がりました!」
 
            ◆◆◆

 捜査一課で大騒動が起こる一時間と数十分前の、午後二時二十分。

 宮橋と真由の姿は、第一事件現場近くにあった。現場の公園から少しの距離にある、昔ながらの駄菓子屋の前に黄色いスポーツカーが路上駐車されていた。

「昨日も刑事さんが来ていたのよ。例の男の子の話でしょ? 時々大人数で見かけたわ。なんだか怖い感じだったのは覚えているけど、それ以外はねぇ……」

 十七年前から、自宅の一部を改装して店を開いているという初老の女は、そう言って申し訳なさそうに微笑んだ。