まるでホラー映画や小説の中のいるようじゃないか、と、つい難しい表情を浮かべてしまっている自分の顔に手をやった。そもそも宮橋は、正確じゃない事は絶対に言わない男だ。彼が「殺人はまだ続く」と言えば、更に被害者は出るのだ。それは確かだった。

 小楠は、長い息を吐き出した。ふと、宮橋が真由とここを出る際、「早急に」と言っていた事が思い出されて、嫌な予感が背筋を駆け抜けた。

「おい、誰か宮橋を見た者はいるか」

 たまらず問い掛けていた。近くにいた捜査員たちが、きょとんとした顔を上げて立ち止まる。彼らは互いに顔を見合わせ、その中の一人がおずおずとした様子で声を上げた。

「あの、今回の事件、宮橋さんも加わっているんですか?」
「ああ、そうだ。宮橋絡みの事件だ」

 すると、場に小さなざわめきが起こった。彼らは今まで知らなかったらしい。小楠はこちらから連絡するしかないか、と考えつつ動揺する部下たちに告げた。