しかし、これは長年携わってきた不可解な事件の中でも、あまりにも遠慮を知らない類のものだった。あまりにもペースが速い。非常に危険で残虐性があり、被害者の死亡率は、今のところ百パーセントときている。

 そう考えながら、小楠は作業に携わる部下に尋ねた。

「おい、例の不良メンバーは何人だ?」
「全員で八人です」
「そのうち、三人が殺されたのか……」
「今情報を印刷します。すぐに残りの五人を捜索出来ますよ」

 少し明るい兆しが見えたという彼の表情に対し、小楠の表情は硬かった。彼はホワイトボードの前で機敏に動く部下たちを眺めた。設置された会議用テーブルの上には、事件現場の生々しい写真が広げられている。

「…………ひどいものだ」

 小楠はその一枚を取り上げた。嫌な予感に、思わず顔が歪む。

 その時、胸ポケットで携帯電話が震えた。小楠は慣れたように傷だらけのそれを取り上げ、すぐ耳に押しあてた。

「こちら小楠」
『三鬼です。第一、第二被害者に比べて、こちらも随分ひどい状況ですよ』