「一部判明していた例の生徒たちですが、昨日から来ていないそうです」
「何?」

 小楠の眉間に、稲妻のような深い皺が入った。

「先程、田中が彼らをよく知るという人物から聞き出し、メンバーの人数と名前も分かりました。どうやら、中学時代から恐喝している生徒も、彼らと同じ高校に通っているそうです」

 小楠は無言で頷くと、腹に響くような怒号で室内にいた男たちに指示を出した。残っていた捜査員たちの捜査意欲に拍車がかかり、「事件解決も近い」「これ以上の被害者を出さない」と意気込む彼らを、けれど複雑な胸中で見つめていた。

 これで事件が少しでも小さくなるとは、実のところ思っていなかった。起こった三つの事件をまとめながら浮かんだ、言葉では説明ではない多くの謎が、彼の中で渦を巻いている。

 常識で測り得ない事を、まるで定義に押しはめて形上の捜査を行うのが、L事件においては暗黙のルールだった。警察期間という立場上、犯人と被害者のいる事件でなければならない。――それが宮橋の提示した条件だった。