早々に三人目の被害者が出た事で、凶悪な連続殺人として県警に本格的な捜査本部が設けられた。『高校生バラバラ殺人事件』の札が掲げられた署内には慌ただしさがあり、いつも以上に緊張した空気が流れている。

 情報が書き殴られたホワイトボードが各課から集められ、一列に並べられた。しきりに電話での怒号も交わされ、出入りする各捜査員たちの急くような靴音が響く。

 先程、緊急会議を行った小楠は、新たに第三の殺人現場となった場所に捜査員らを派遣した後、そのボード板を睨んでいた。

 彼は、苦渋の色を隠せなかった。被害者は全てN高校の生徒であり、まだ十六歳と若い。関連性があると見て取り、被害者たちが『いつもつるんでいる主要メンバー』の名前と人数を、急ぎ確認しているところだ。

 それなのに、不思議と誰一人として捕まらない現状続いている。そのせいもあって、小楠は苛立ちと焦燥で押し潰されそうだった。

「小楠警部」

 声を掛けられた小楠は、厳しい顔つきのまま振り返った。また上からの電話かと身構えるが、打ち解けた仲である警部補の姿を確認して「なんだ」とだけ問う。