『ちっ、相変わらず嫌なところだけ、ピンポイントで推測してついてくるよなぁ。聞きこみで、いちゃもんをつけられた金を取られたという話は聞いてる。ちなみに、事件が発覚してまだ一日も経っていない中で、容疑者像はまだ上がってねぇ』
「そんなのは予測済みさ」
『けっ、そうだろうな』

 その時、話していた彼がシートから背を起こして、こちらを向いて足元の手帳を指してきた。

 ちょっと見せろ、とでも指示されているらしい。そう思って広げてやると、宮橋が長い上体をずいっと寄せて手帳を覗きこんできて、綺麗な顔がすぐそばまで迫った真由は、不意打ちのようにドキリとしてしまった。

 平然とした態度を心がけたものの、手帳へと視線を落とした宮橋の、睫毛の一本一本が見えるほどの距離に緊張を覚えた。しかも、彼がおもむろにしっかりとした男性らしい、それでいて長い指を伸ばしてきてページをめくり始め、その振動が太腿に伝わってきて落ち着かなる。