『書いたか?』
「ああ。で、入店時はどうだった? 何かに追い込まれたような様子だったと思うんだが」
『――お前の言っている通りだよ。どうして分かった?』
「――さぁね。で、その時の被害者の様子は?」

 宮橋が肩をすくめる様子を、真由は静かに見つめた。電話をする様子もさまになっていて、こんなに綺麗な日本人男性もいるんだなぁと、どこか西洋風の顔立ちにも見えるその美麗な横顔を目に留めてしまう。

 すると、不意に、彼の整った綺麗な顔がこちらを向いてドキリとした。一体なんだ、と問うように彼の瞳がくいっと細められて、真由は慌てて、なんでもないですと答えるように顔の前で手を振った。

『防犯カメラの映像を見たが、ひどく怯えた様子だったな。お前、もう何か掴んでいるんだろ? 一体なんだ』
「ビデオには、他に何も映っていなかったのか?」

 途端に宮橋が、まるで落胆するみたいな調子で声を落とした。シートへ身体をもたれると、分かりきっているような言葉を待つかのように、一度目を閉じる。