投げられた三鬼が条件反射で受け取り、血が付いた濡れタオルに「おわっ」と短い悲鳴を上げるのも無視して、宮橋は藤堂に「現在分かっている情報が欲しい」と告げた。

「それ、手書きのやつでもいいですか?」
「ああ、構わないよ。三鬼のような、ひどく汚い字は勘弁だが」
「あははは、俺のなんで安心してください」
「おい。そりゃあ、どういう意味だよ」

 三鬼は憮然と呟いたが、同期の宮橋にも後輩の藤堂にも無視されていた。藤堂が、どこのページに書かれているのか手短に説明して、使い古した手帳を宮橋に渡す。

 移動したばかりの部署で立ち回りが掴めていない真由は、小楠警部の話を思い出して、役に立たないし帰れって言われるかも……と想像した。さすがに、コンビを組まされて一時間もせずに戦力外通告をされたらショックが大きそう――

 その時、宮橋がくるりとこちらを振り返ってきて、思わずビクリとしてしまった。美しい顔が真っ直ぐこちらに向けられたかと思ったら、目の前に手帳を突き出されてびっくりした。