「おいおい、あんまり血を広げんなよ。お前に与えられている権限だって、内容がちっと特殊で、他の連中にはあまり知られてもいないんだぜ」
「ああ、分かってるよ」

 物想いに耽っている様子で、宮橋が条件反射のような返答をし、三鬼が「ホントかよ」と呆れたように言った。

「見つからない身体の一部は、特定出来たか?」
「はっきりしているのは、一番目の両目と片方の腕、二番目は、今のところ右足だけだが――つか、今回の事件は異常だな。生きたまま内臓の一部を取り出されているって報告が、さっき入った。どの臓器か、分かったらすぐ伝える」

 その時、不意に宮橋の足がぴたりと止まった。

「ああ、なるほど。補い行為か」

 独り言のように口にした橋宮は、疑問の声を上げようとした二人の間に割り込んで足早に室内から出た。警察官から、血を拭うための濡れタオルを受け取り、慣れたように靴の血を拭き取ると、彼はそれを三鬼に投げ渡す。