しばらく考えるように黙っていた三鬼が、難しそうな顔で頭をかいた。

「第二現場は、被害者の部屋だったんだ。色々とありすぎて分からん」
「君ならそういうと思ったよ。藤堂君、君はどうかな」

 宮橋はそう言い、続く三鬼の愚痴を完全に聞き流して、携帯電話を元の位置に戻した。

 二人の刑事が、第二現場の様子を思い出そうと首を捻る後ろで、真由は学生の部屋にある物を想像して、彼らに少しでも協力出来るように指折りあげてみた。

「パソコン、携帯電話、財布、勉強机、コンポ、勉強道具、とか『色々』?」
「その通りなんだがな、他にもゲーム機だとか、よく分からない小物も結構あった」
「大人が持っていそうな物を除いた全部、って感じみたいな部屋でしたよね」

 そう相槌を打った藤堂が、ふと思いだしたような顔で「そういえば」と宮橋に言った。

「財布には、新しいお札が入っていましたね。五千円くらいかな。バイトもしていなかったらしくて、お小遣いをあげた覚えがなくて親御さんは心当たりがないそうです」
「カツアゲしたお金かな」

 宮橋はさらりと推測を口にして、顎に手をやった。視線を落として室内を見渡し、短い範囲をゆっくりと歩く。

 それを見た三鬼が、顔を顰めて同期の彼に声を掛けた。