「携帯電話とか。あと、被害者の荷物にしては、変だなと感じた物だとか」

 問われた三鬼は、思い出そうと苦戦しつつ「どうだったかな」と腕を組んで呻った。宮橋は、被害者の携帯電話に電源が入る事を確認していたが、藤堂が「覚えてますよ」と挙手すると、携帯電話から顔を上げて彼を見やった。

「公園では、財布だけでしたね」
「他は何もなかった?」
「はい。今時の若者にしては、荷物がたったそれだけというのも、ちょっと変だなぁって思ったんですけど」

 そう答えた藤堂に、途端に三鬼が「馬鹿野郎」と呆れたように言った。

「携帯電話が、一キロ離れたゴミ捨て場から発見されただろうが。自分で壊したのか、壊されたのか分からない破損したヤツがな」
「あ、そうでした」

 藤堂は、すっかり忘れていたと言わんばかりに、愛想のいい瞳を丸くした。

「そうでした、じゃねえよ。ったく、何が『覚えてますよ』だ」
「で、第二現場では?」

 宮橋の尋ねる声を、真由は三鬼と藤堂の背中越しに聞いていた。一体、彼は何を知りたがっているのだろう? 一人そんな疑問を思い浮かべる。三人の会話を聞いているうちに、気分はだいぶ落ち着いてきたのだ。