三鬼は懐中電灯の電源を切ると、それを警察官に返して再び室内を覗きこんだ。その目に焼き付けようとするかのように、辺りをじっくりと観察していく。藤堂は、そんな先輩の姿に「俺にはまだまだ真似出来そうにないです」と、尊敬の眼差しを注いだ。

 真由は、どうにか身体の震えは収まってきたので、口に当てていた手を降ろした。

 深呼吸を繰り返していると、藤堂が三鬼と同じように室内を見回し始めていた。私よりちょっと年上かな、と彼の細い立ち姿を見てぼんやりと考えてしまう。すごいなあ、私も頑張らなくちゃいけないのに、なんだか全然役に立っていないや……

 その時、宮橋が入口に立つ三鬼と藤堂を振り返った。

「第一の現場、第二の現場に、君たちは行ったんだよな?」
「ああ、行ったよ。俺らの管轄だ」

 三鬼がぶっきらぼうに答え、藤堂が首を上下に振る。

「現場にあったもので、何か気になる物はかったか? 例えば……」

 宮橋が辺りを見回し、ふと、胸ポケットから白い手袋を取り出した。それを慣れたように片方の手にはめて、テーブル下に転がっていた血だらけの小さい携帯電話を取り上げる。そばにある腕など、まるで気にならないようだった。