天井には、中央部分から斜め直線に向かって、太い血痕が伸びていた。懐中電灯の眩しい明かりが、ゆっくりと血痕を追い、それは北側の横壁でぴったりと途切れているのが確認された。

 その部分の壁には、一滴の血も付着していない。まるで、血液がつかないようにシートを張っていたとしか思えないほどの不自然さがあった。

 すると、宮橋が振り返って、当然のようにこう述べた。

「引きずったんだろ。見れば分かるじゃないか」

 途端に三鬼は、彼の顔に灯りを当てると、眩しそうに目を細めるのも構わず「どういう事だよ」と説明を迫っていた。苛立ちと怒りの板挟みに遭い、今すぐにでも怒鳴り散らしそうな気迫だった。

 秀麗な眉を顰めた宮橋は、面倒そうに頭をかいた。

「だから、持って行かれたんだよ。被害者の身体の一部がね」

 これはもう確定だな、とぼやいた宮橋は「そのクソ眩しいライトを消すように」と言った。灯かりに照らし出された切れ長の瞳孔は、日本人にしては明るくも見えた。