真由と藤堂は、宮橋が見つめていた廊下へ差しかかると、誰が合図したわけでもなく二人で揃ってひょいと覗きこんだ。静まり返った廊下には、こちらと同じようなポスターが並んだ壁に、同じようなガラス扉が続いていた。通路は突きあたりから左へと続いている。

「とくに、何もないっすねぇ」

 藤堂が、そう感想を口にした。真由は小首を傾げて「そうですねぇ」と答えた。

 じゅうぶん確認した二人は、視線を先輩組刑事の背中へと戻そうとしたところで、ギクリとして動きを止めていた。突き当たりにある壁に、不自然に浮き上がる色が一つ現れていたからだ。

 先程には、何もなかったはずだったが、それは白に近い明るいベージュで統一された壁に、あまりにも異質な色を浮かべ上がらせて映えていた。

「あれ、血じゃ……」

 そう藤堂が呟く。真由も、信じられずにその場所を凝視していた。二人には、まるで何もなかったように思えたその白い壁に、一点の小さな赤が突如として浮かび上がったように見えて驚いていたのだ。