きっと気のせいなのだろう。僕は病気になんてならない。

 少年は、すっかり何も感じなくなってしまった自分の気持ちが、あまりにも不透明なことを自覚していた。自分のことなのに、自分がよく分からない。

 いつしか、無意識にそれを探す行為が、自分同士との対話だと考えるようになった。

(トモノリ、トモノリ)

 心の中で無意識に呟かれる言葉は、いつも突発的だ。

 少年は乾いた笑みを浮かべた。それは幼い頃亡くなった『おじいちゃん』の名前だと心の中で答えた。僕の名前はトモヒサだと告げると、静まり返った心の中で、不思議と言葉が返ってくる。

(トモヒサ、トモヒサ。空虚、何モナイ)

 寂しさに似た感情が胸の奥底に起こった。しかし、少年はそれが自分自身のものなのか、その言葉が引き起こしたものなのか分からなかった。

 ふと、もしこんな生活じゃなければ、と思った。

 こうなった原因を『全て無くせば』『終わらせられたら』どうだ、と少年の中で言葉が続く。