突然現れた黄色いスポーツカーに気付いた野次馬と、警察関係者たちが、途端にわっと散り散りに避難した。サイドブレーキを引っ張った橋宮の車は、そのまま後輪を滑らせ、一番先頭にあったパトカーの前に見事駐車された。

「ふむ、八分か。まぁまぁいいタイムじゃないか」

 満足する宮橋の隣で、真由は先程からぐるぐると回る視界に吐き気を覚えていた。それを察知した彼が、眉根を寄せて彼女を見やる。

「吐くなら外で吐け」
「あんたは鬼ですか」

 乙女になんて事を言うんだよ、と思わず続ける指摘を無視して宮橋は外へと出た。口を押さえながら、真由もぐったりとした様子で慣れない車の扉を開ける。

 すると、騒ぎを聞きつけた三鬼が、到着早々カラオケ店の細い階段から肩を怒らせてドカドカと降りてきて、自分の車の安否を素早く確認して叫んだ。

「またお前かッ、宮橋雅兎!」
「君は相変わらず騒がしいなあ。自分で喚いていて、耳、痛くならない?」
「じゃかあしぃ! 毎度毎度騒ぎを起こしおって!」
「あ、今のちょっと爺臭かったぞ」

 更に大きく息を吸い込んだ三鬼の口を、彼を追って降りてきた相棒で後輩の藤堂が、慌てて押さえた。もがく先輩の脇から顔を出し、すかさず「宮橋さん、警部からは話を聞いて、お待ちしておりました」と告げる。