「被害者の通っているN高校って、どこにあるんですか?」
「ここから四十分の距離にある。いちおう進学校らしいな」

 小楠は肩をすくめて、「一年生の中に、とんでもない問題児どもが隠れていたもんだ」と冗談のような口調で続けた。

 場所は知らないでいるものの、真由はN高校の名前なら知っていた。大学の進学率が非常に高く、就職先の確保も良いと評判の高校であったはずだ。三年前大きく改築された未来都市型の学校施設も、話題になっていた覚えがある。

 商業専門の授業も充実しており、進学や就職のどちらにも対応しているという。暴行や強姦を働く頭の良い不良がいるというのも、残念な話ではあるけれど。

「今頃、学校は大騒ぎですね」
「今は報道規制をかけているが、不安になっている生徒も多いだろう。だからこそ、早く解決しなければならん。希望を言うと、もう誰にも死んで欲しくはない」

 その時、ファイルを閉じる音が上がった。顔を上げた小楠と真由を見つめた宮橋が、間髪入れず「それは無理だね」と言い放っていた。