「今回の事件、どう思う？」
「調べてみない事にはなんとも言えないが、どうも厄介そうだ。もし『そう』だとすると、間違いなく僕の管轄内だろうね」

　宮橋は顎に手をやって、眉根を寄せて視線をそらした。独り言のような、事件について曖昧な意味合いを含む台詞に、真由は「もう何かしら掴んでいるのでは」と感じた自分に戸惑いを覚えた。

　だって、そんな事あるはずがない。彼はこの事件には直接関わっていなくて、こうして小楠から話しを聞かされたばかりだ。そのせいか、刑事というよりは、まるで探偵みたいだと感じてしまう。

「今現在、分かっている情報を知りたい」

　短い思案を終えた宮橋が言い、小楠が頷いて一度席を立った。彼は扉を開けたままずかずかと出ていくと、数分足らずで戻ってきて、一つのファイルを彼に手渡した。

　開けられたままの扉の向こうからは、数人分の会話や携帯電話の着信音が聞こえてくる。真剣な表情でファイルを開き見る宮橋の向かいで、真由は小楠をちらりと見やった。