「話によると朝食が出来たのは午前七時で、母親が一度、次男に西盛昇を呼びに行かせ、部屋を出たくないという返事を聞いている。つまり、午前七時まで彼は生きていたわけだ。弟の方は十五分ほどで食事を済ませて、隣室の自分の部屋に戻っている。午前七時五十五分に部屋を出るまで、兄の部屋から物音がするのは聞いていないというから、もしかしたら犯行は午前八時以降の可能性も――」

 その時、彼の話を遮るように、宮橋がこう言った。

「弟君が隣室にいた時、ちょうど殺人が行われていたかもしれないよ。――まあ、可能性の一つにすぎないけどね。もしかしたら、彼が出たあとに行われたかもしれないし」

 まるで取ってつけたように、宮橋は肩をすくめて見せる。

 真由は少し怖くなってしまった。犯人はそれまでずっと、被害者の部屋にいて弟が部屋を出ていく様子を窺っていた可能性もあるのだろうか?

 まるで茶化すような宮橋の発言について、小楠は叱りつけるような事はしなかった。太い腕を組むと、確認させるように状況の詳細について語った。