彼のところで頑張りたいのだ。どうしてか時間が経つごとに気持ちは強くなって、まるで初めての受験の結果を待つレベルで落ち着かない。

「お前らは、一体何をやっているんだ?」

 ふっと馴染んだ『小楠おじさん』の声が聞こえて、真由は椅子を少し回しつつ振り返った。

「小楠警部、お疲れ様です。あれ? その大量のサンドイッチ、どうしたんです?」
「朝メシらしいものを、きちんと食べていなかっただろうと思ってな。ついでに買ってきた」

 ほれ、と小楠に手渡されて、真由は藤堂の机に空になった缶珈琲を置いて、それを両手で受け取った。いつも好んで食べている野菜たっぷりのものだと気付いて、つい「わぁ」と瞳を輝かせていた。

 反射的にガバリと立ち上がった三鬼と、遅れて立ち上がった藤堂が、小楠に挨拶をした。彼は「お前らも食うか?」と尋ねて、袋から好きに取らせた。

「小楠警部に朝からサンドイッチをもらえるとか、昨日の疲れが全部飛んだ……」
「先輩、顔を押さえてどうしたんです?」

 近くからその様子を見ていた田中達が、ちらっと苦笑を浮かべて「あの人、昔から尊敬しすぎだよなぁ」と言葉を交わす。藤堂は気付かず「疲れているのかな」と気を遣って、彼を椅子に座らせた。