他の捜査員たちが、鉄格子から部屋の中を見つめたまま、黙祷するような沈黙を守って佇んでいる中、真由はふらりとそこへ歩み寄った。

 藤堂と小楠の脇を通り過ぎて、細い鉄の骨組ベッドに置かれた、分厚いマットの上に横たわる少年の姿に目を落とした。白いシーツが敷かれたその上には、与魄智久が横たわっていた。

 智久は、整えられた毛布を身体の下に置いたまま、両足を揃えて腹部の上で指を組んでいる姿勢だった。ベッドの脇には、彼が履いていた靴が並べられ、枕の横には彼がかけていた丸い眼鏡がある。

 少年の頬はまだ血の気があり、花弁のような小さな唇も薄く色が付いていた。幼い顔に浮かぶやすらかな微笑みは、ひどく穏やかで幸せそうで、今にも瞼を震わせ目を開けてくれそうなのに――

「死後一時間ほどです」

 鑑識の男が、気遣うようにそう囁いた。彼女は「そんなの嘘よ」と震える声で呟いてしましまっていた。この場で唯一の女性捜査員の悲痛な声を聞いて、藤堂だけでなく、他の男達の何人かが顔を伏せる。