「ということは、私も実際は、正式に配属が決まっている状態ではないんですか?」
「その通りだ。配属決定の条件として、宮橋の意思確認が必要でな」

 だというのにあいつは、と小楠が眉間に出来た皺を指で解す。普段であれば、組まされた当日内に何かしら反応を伝えられて推測も立つらしいが、今回はそれがないからなぁ、と彼は独り言のように呟いてもいた。
 

 そこで一旦解散の運びとなった。真由は荷物を持ち、朝一番に出勤したら智久のもとへ顔を出そうか、と藤堂と約束して署を出た。

 乗り慣れた白い中古の軽自動車でアパートへ向かいながら、黄色いスポーツカーが見えたりしないだろうかと探してしまっていた。見かけることはないだろうと分かっていたのに、そのままアパートに到着して落胆を覚えてしまう。

 シャワーを浴びて身体の汗や埃を流しても、普段のように「まずは仕事帰りの一本のビール!」という気分にはなれなかった。上下の下着に白いシャツをはおったまま、部屋に満たした冷房の心地良さに、しばらく身体の熱をさましていた。