「ほんとに、驚いてしまいました。橋端さんが質問したのもそうでしたけど、料理を待っていた智久君が、当たり前のように俺らを見つめ返して『僕がこの殺人事件の実行犯ですよ』って、真っ直ぐ言われたのがショックでもあった、と言うか……小楠警部が、明日話しを聞けば分かるだろうって、さっきも言っていました」

 そう話を締めた彼が、ベンチの背に身体を預けた。大きく息を吐き出し、壁に後頭部をつけて天井を見上げる。

 真由も身体から力を抜いて、尻の位置を楽にした。自然と開きそうになった足をどうにか踏みとどめてから、ふうっと息を吐く。ファミリーレストランでそう告げた智久の表情と目は、一つも嘘偽りがないのだと感じさせるもので、けれどそれが上手く受け止められないでいる。

「なんだか俺、短期間にいろんなことがあって、ちょっとしんどかったです」
「私もです。……三鬼さんがまだ走り回っているのが、信じられないです」
「あ~……先輩って結構、仕事熱心で、体力の底を知らない感じもあるんでよ。俺も後少しやる事があるから、多分、それが終わるまでには戻ってくるかなとは思いますが」

 二人の間に、しばし沈黙が続いた。昼間が連続殺人事件で騒ぎになっていたせいか、夜の署内がやけに静かに感じてしまう。