真由と藤堂は視線を交わしたが、戸惑いつつも視線を戻していた。改めて容疑者として対面させられたところで、その推理に間違いはないのかという当初の疑問を遅れて思い出したかのように、強行的な取り調べなど行えない様子で少年を見つめる。

「事情聴取は明日、朝一番に行う」
「ありがとう、小楠警部」
「――どうして礼を言うんだ、宮橋」
「――そうだったな、どうして礼なんか言ったんだろう」

 そう答えた宮橋は、ぎこちない不敵な笑みを浮かべて、「『僕は質問には答えない』、このまま彼を乗せて行ってくれ」と、お決まりの台詞のように前置きして、そう告げた。そして、智久を手で示して言う。

「ただ、署に向かう前に、暖かい食事をあげて欲しい。本人は逃げるつもりはない」

 そこで彼に目を向けられて、真由と藤堂が揃ってビクリとした。

「いいかい、君たち。彼の事情聴取は、明日きちんとするんだ。食事をしたら、署まで安全に送り届けるんだぞ」
「分かってますよ。でも、あの、宮橋さんは……?」
「僕は、近くに自分の車を停めてある」

 すかさず美麗な顔に顰め面を作られて、真由が思い出したかのように「あ、そうか」と口に手をあてた。