三鬼は、目が合った瞬間、背筋が冷たくなるような違和感に顔を強張らせていた。幼さが残る彼は、まるでひどく歳を取った教師か、随分長い年月を修行した僧侶のように穏やかで、落ちつき過ぎている気がしたからだ。

 智久は、丸い瞳でしばらく見つめ、ふっと微笑んで「こんばんは」と挨拶した。三鬼は、挨拶に応えるようにぎこちなく頭を動かした。

 智久は眼鏡を両手でかけ直した後、再び宮橋と視線を合わせた。見つめ合う二人の顔は、ひどく穏やかでどこか悲しげだ。言葉を交わさなくとも通じ合っているような雰囲気に、三鬼は正体の分からない不安を覚える。

「…………本当に、お前が犯人なのか?」

 場の空気が呑まれそうになって、三鬼は気付くと、そんな言葉を出していた。すると、智久が迷いなく穏やかに「はい」と答えてきた。

「きちんとした場で、ちゃんとお話しします」

 非常に落ち着いた言葉が返ってきてすぐ、三鬼は額を抑えて「そうか」と一旦、そこで話しを終わらせるように吐息混じりに言った。事情聴取は、自分か小楠が担当することになる。「ゆっくりした後で、話を聞く」とだけは伝えた。