「昨日、騒ぎになっていた事件だろう」

 まずそう口を開いたのは宮橋だった。これから取り組む事になる事件について話し合うため、三人は円陣を組むように、部屋の外から持って来た事務椅子に腰かけて向き合っていた。

 小楠が「ああ」と答えて頷いたそばで、向かい会う二人を見ていた真由は、つい口を挟んだ。

「騒ぎになっていたやつって、高校生の死体が出た事件ですか?」
「うん、それだよ。しかも犯行は、一昨日の深夜から昨日にかけて二つだ」

 宮橋はそう言って、小楠に説明を求めるような視線を寄こした。小楠は「分かっとる」と短く答えると、開いた足の間で手を組んで口を開いた。

「九日明朝、N高校一年生、松宜俊平の遺体が公園の隅で発見された。第一発見者は散歩をしていた女性だ。報道でもあったように、死体はバラバラにされていた。死亡推定時刻は八日の深夜。調べてみると被害者は、暴行、酒にタバコに無免許運転、それに加えて深夜の暴走族メンバーであることも分かっている」