それを越えた宮橋が、右手にある建物の裏口の前で立ち止まった。ゆっくりとしゃがみこんだ彼の上から、そこを覗きこんだ三鬼はハッとした。
質素な鉄扉の前にある、コンクリートで作られた正方形の小さな土台の上に、一人の少年が丸くなって横たわっていた。
きちんと着込んだN高校の制服と、癖のない黒髪に丸い眼鏡。少し幼さが残るふっくらとした白い顔は、写真で確認した与魄智久である。
少年は、規則正しく肺を膨らませていた。三鬼は、耳をそばだてて彼の呼吸音を自分の耳でハッキリと聞き届けたところで、胸を撫で下ろした。ここ二日で残酷な死体を見過ぎていたので、反射的に嫌な予感を覚えてしまったせいだった。
「驚ろかすなよな」
思わず愚痴ると、宮橋も続いて膝を折った。そっと手を伸ばし、幼さの残る与魄智久の頬にかかった長い前髪を、そっとかき上げた。
「与魄智久、目を覚ませ。『僕』が迎えに来たぞ」
そう呼びかける宮橋の声色は、普段の彼からは想像もつかないほど穏やかで弱々しかった。三鬼は眉根を寄せたものの、少年へと視線を戻して反応を窺う。
質素な鉄扉の前にある、コンクリートで作られた正方形の小さな土台の上に、一人の少年が丸くなって横たわっていた。
きちんと着込んだN高校の制服と、癖のない黒髪に丸い眼鏡。少し幼さが残るふっくらとした白い顔は、写真で確認した与魄智久である。
少年は、規則正しく肺を膨らませていた。三鬼は、耳をそばだてて彼の呼吸音を自分の耳でハッキリと聞き届けたところで、胸を撫で下ろした。ここ二日で残酷な死体を見過ぎていたので、反射的に嫌な予感を覚えてしまったせいだった。
「驚ろかすなよな」
思わず愚痴ると、宮橋も続いて膝を折った。そっと手を伸ばし、幼さの残る与魄智久の頬にかかった長い前髪を、そっとかき上げた。
「与魄智久、目を覚ませ。『僕』が迎えに来たぞ」
そう呼びかける宮橋の声色は、普段の彼からは想像もつかないほど穏やかで弱々しかった。三鬼は眉根を寄せたものの、少年へと視線を戻して反応を窺う。