それでも、どちらも普段通り、引かずという状態で睨み合った。数十秒も待たずに、宮橋は苛立ちを増して秀麗な眉を顰め、三鬼も女性にモテない強い仏頂面を浮かべた。

「僕の邪魔をするようなら、ついてくるな、馬鹿三鬼」
「ふんっ、俺はどこまでもついていくさ。誰かさんに言わせると、『しつこくて執念深い、体力だけが取り柄の馬鹿な男』らしいからな」

 途端に宮橋が「勝手にしろ」と、踵を返して再び歩き出した。三鬼もまた、同じように一定の距離を開けたまま、彼の後ろをついて歩いた。

 サンサンビルの反対に位置する、大通りに抜けた。帝天ホテルが、まだ明るい夕暮れを全身の鏡面ガラスに反射させており、事故規制の範囲外のため車も人の数も多かった。

 続いて宮橋が進んだのは、建物同士の間にある細い路地だった。車の通行が禁止されており、幅は軽自動車一台分ほどしかない。飲食店のフタ付きゴミ箱が四つ並び、従業員の自転車とバイクが数台停まっているばかりだ。