信頼されて、だから頼まれてくれるかと、役目を与えられたのだろう。そう考えてみると相棒らしい仕事とも思えて、疲れている彼に代わって、体力が有り余っている自分が連絡係りをしよう、と決めた。

 ゆっくりと歩き始めた宮橋の後ろに、三鬼が続いた。彼は「藤堂、橋端さん、あとは頼む」と、後輩組に短く言葉を告げ、唇を一文字に引き結ぶ。

「…………なんとも、悲しい事件だよ」

 前を歩く彼が、ポツリと独り言をもらした。

 すぐ後ろを歩きながらも、三鬼はポケットに手を突っ込み、聞こえない振りをした。

             ◆◆◆

 薄暗くなった通りに停まったいくつものパトカーが、頭に乗せた赤い警告光を回し続けている。

 制服を着た警察官が慌ただしく走っていくのを、通行人たちが不思議そうに見やった。シャッターの降りた宝石店の辺りが騒がしくなったのを聞いたが、三鬼はちらりと視線を送っただけで、すぐに前方へと注意を戻した。

 目の前には、乱れた茶色い髪を揺らしながら歩く、宮橋の背中があった。歩幅はいつもの半分、速度はいつもの倍以上の遅さだ。スーツのズボンにぶつけたような痕が残されていて、恐らくそれが原因だろう。