「でも、どうして無人の車が、突っ込んできたんでしょうか」
「事故の原因なんて、処理班に調べさせたらすぐに分かることだろ」

 宮橋は、何も話したくないんだ、と言わんばかりにそっけなく答えて、再びこちらに目を留めてきた。

「済まないが、藤堂をサポートしてもらえるか? 両手が塞がっている状態では、携帯電話で前もって連絡も取れないだろうから、そっちを君が頼まれて欲しい」
「あ、はい。分かりました……」

 その方が、現場もスムーズに回るだろう。事故と捜査が両方起こった場合の動きについて、経験からそう推測出来たものの、なんだ、ついて行けないのか、と真由は小さく気持ちが沈むのを感じた。

 ただ迎えに行くだけだから、人間の数は必要ではない。三鬼や藤堂だって、コンビを組んでいる中で、臨機応変に二手に別れて動くこともある。けれど、なんだか大事なところで距離を置かれるようで、今の彼と離れたくない気がしていた。

「頼んだぞ」

 そう言い残した宮橋の横顔は、憔悴しているようだった。通り過ぎていく直前、その表情が切なそうに歪むのが見えて、真由は何も言えなくなってしまう。