「これで契約は完了した! もうお前のすべきことは何もない! 繋いだ形を喰らって帰るがいい!」

 爆風から身を守っていると、破壊音に負けじと叫ぶ宮橋の声が聞こえた。

「あいつは大丈夫なのかッ?」

 叫んだ三鬼の背中に、プラスチック製の部品が当たった。真由は、顔を歪めた彼に気付いて声を掛けた。

「大丈夫ですかっ?」
「ぐぅ、問題ねぇよ……クソッ、まるで厄日だぜ」

 三鬼は堪らず、目尻にひっそりと涙を滲ませた。マサルを両腕で抱えた藤堂が、「宮橋さん絡みだと、先輩いつもそうですよねぇ」と、ぽつりと口にした。

 しばらくもしないうちに、二台の車が破壊の連鎖反応を終えていた。ひどい熱風はまだあったが、三鬼がマサルを藤堂に任せたまま立ち上がる。

 真由は、髪をぼさぼさにした状態で、視界の端に動く宮橋の姿を見付けて、目を向けた。

 こちらへとゆっくり歩いてやってくる彼は、先程の爆風で、すましたような髪型も崩れていた。整った白い顔には、真っ直ぐ薄らと赤い線が入っている。