ジャケットの肩部分を乱暴に掴まれた真由は、女の子にその掴み方はない、と思った直後、三鬼の肩越しに飛んでくる影に気づいた。藤堂と揃って「ゲッ」と品もなく顔を引き攣らせる。

「三鬼さん頭下げてッ」
「三鬼先輩危ないです!」

 真由と藤堂は、ほぼ同時に三鬼の肩に手を置いて、一気に体重をかけて彼の頭の位置をぐっと下げていた。

 両肩にかかった重りに耐えきれず、三鬼が「うおッ」と声を上げて腰を曲げた時、頭上すれすれを鉄の固まりが通過していった。サンサンビルの大通りへと投げ出されたそれを見て、彼は顔面を引き攣らせたが、文句も礼を言う余裕もなかった。

 たった二台の車による衝突事故だというのに、立て続けに爆発は続いていた。三鬼は藤堂と共に、頭を低くしながら、意識のないマサルを引きずって壁際に移動する。

 爆発と爆風と飛翔物が飛び交う騒がしさで、真由は宮橋の姿を見失ってしまっていた。

 気になって少し移動の足が遅くなっていたら、壁際からこちらを振り返った三鬼に「もっと頭を下げろッ」と警告された。慌てて視線を戻したら、マサルを藤堂に押し付けた彼に、またしてもジャケットを掴んで引っぱられた。