真由は、その光景を正面に立つ宮橋の背中を見た。色素の薄い彼の髪が、爆風で激しく揺れている。どうしてか、まだやることが残っていると言わんばかりの真っすぐ伸びた背に、危ないから下がってください、とは声を掛けられなかった。

 すると宮橋が、取り出したシルバーの携帯電話を、火柱に向かって頭上高く放り投げた。小さな爆発によって車の破片が飛んでくるのも構わず、次の瞬間、目にも止まらぬ速さでピストルを引き抜いて構えていた。

 立て続けに、三発の銃声が鳴り響いた。見事に銃弾を命中させられた携帯電話が、宙を飛ぶ中で中央にいびつな穴を開けられて、銃撃によって弾かれ、火柱へと向かって落下していった。

 その直後、車が完全に重なり合って、これまでにない大きな爆発が起こった。車の破片が四方に吹き飛び、大きな塊も勢いよく弾かれて、乾いた音を立ててアスファルトの上を転がる。

「くそッ、宮橋テメェも避難しろよ!」

 危険を感じた三鬼が、そう吐き捨てて爆風から背を向け、守れと指示を受けていたマサルを庇い、ついでに後ろにいた二人の後輩刑事も引き寄せた。