三鬼は、まるで鉄の重りが飛んできたような衝撃を受けて、「ぐぉ!?」と呼気を吐き出した。真由は慌てて立ち上がり、後ろからその背中を支え、藤堂もそれに続いたが、途中で意識を失った少年の体重がガクンとかかって、結局は三人揃って再び地面に逆戻りしていた。

「クソ痛ぇなッ、ガキの身体を軽々と放り飛ばすとか、滅茶苦茶だろ……!」

 尻に痛みを覚えながら、三鬼が悪態をこぼした。

 その一瞬後、暴走車のフロント部分に、無音で警告灯を回すパトカーが突っ込み、耳を切りさくような破壊音を上げた。どちらもかなりの速度で衝突したため、続いて爆発を起こしながら、地面に部品を撒き散らしていく。

 爆風に煽られ、反射的に顔を伏せる宮橋の姿に気付いて、頭を起こし上げた三鬼が再び「宮橋!」と叫んだ。しかし彼は、左腕で頭をかばうだけでこちらさえ振り返らず、後退する様子は見せなかった。

 白い乗用車は、フロント部分から中央まで完全に潰れ、後輪を浮かせたパトカーが軋みを上げて更に折り重なると、続いて二回目の大きな爆発が起こった。発生した火の威力が増して、一気に広がり、あっという間に二台の事故車を包みこんだ。

 広がるように燃えるはずの炎が、風もないのに高く伸びて火柱を作った。燃え続ける車から発生した黒い煙を巻きつけながら、立ち昇ったそれは、生き物のように建物の屋上近くまでうねり上がる。