自分たちから一メートルも離れていない頭上を、色も分からない重々しい物体が、影を落として通り過ぎていく。見間違いでなければ、後方から突っ込んできた際に見たそれは、自分たちがよく見慣れた――

「いたっ」

 その一瞬後、真由はドサリと倒れ込んで思考が途切れた。身体の半分に三鬼の背中が落ちてきて、その衝撃に「ぐはっ」とまたしても色気のない声を上げたが、不思議と倒れ込んだ時、後頭部を地面に打つ痛みは襲ってこなかった。

 三鬼が倒れた衝撃に歯を食いしばり、しかし痩せ型の細身ながら、身体能力の高さを見せてすぐに上体を飛び起こした。

「チクショー一体なんだってんだ!」

 そう怒鳴った彼の目が、宮橋の方へと戻されてすぐ、大きく見開かれる。

 倒れ込んだまま、真由は顔だけを動かして宮橋を見やった。彼女を庇うように片腕を出して踏み潰されていた藤堂も、痛みに顔を顰めつつ、自身の認識と状況を確認するように素早く目を走らせていた。

 まだ地面に着地していないその重量級の物体は、立派な一台のパトカーだった。音もなく警告灯を回したまま、どうやってバウンドしたのか分からないくらいに、大きな弧を描く大ジャンプで宙を待っている。