「わざわざ条件の揃ったこの場所まできたんだ、そこにターゲットである君がいるのなら、ヤツは間違いなく出てくるよ」
「おい宮橋! 次のターゲットがそいつで、だからここに連れて来たって一体どういうことだ!?」

 聞いてないぞ、と三鬼が怒鳴る。しかし、宮橋は振り返らなかった。彼は瞬きもせずに正面奥の、国道が走る出口を見据える。

「――いいか、三鬼。君たちは今、いない存在なんだ。だから何があっても、たとえどんなことが起こったとしても、絶対にそこから動くな。そうすれば、ヤツからは見えない」

 宮橋は一度、肩越しに私情の読めない瞳をこちらへと向けた。薄暗ささえ覚える視界で、明るい茶色の瞳がやけに浮き上がって見える。

「君たちは、自分の身と、マサル少年を守るんだぞ」

 再度そう言うと、宮橋は前方へと向き直ってしまう。

 不意に、鼓膜が低く振動するような違和感が起こった。気圧の変動のように耳が半詰まりする。真由は顔を顰め、三鬼と藤堂と揃って、耳に生じた異変を拭おうと唾を飲み込む。