「お前の事だから、どうせ保護対象者を署に連れてもいいってのは、邪魔だからどかすついでに、佐藤たちの方の気をそらすためなんだろ。また、何をしでかそうと企んでるんだ?」
「よく分かっているじゃないか。君も、少しは利口になったようだね」
「バカヤロー、そうでなきゃ事が進まねぇだろが」

 三鬼は、比較的声量を抑えてそう言った。

 事故もあってか、向こうの通り側に見える人々の話題は、もっぱら事故処理班と被害者たちに向いているようだが、警戒しての事だろう、と真由は推測する。

「で、どうすりゃいい? どうせまた、お前が一人で迎えに行くってか? 相手は十六歳のガキだしな、大勢で行くと面倒なことになるってんだろ」

 三鬼は声を落として、投げやりに言葉を吐き出した。すると宮橋が、ちょっと苦笑を浮かべて「今回は、そうでもないんだな、これが」と曖昧な返事をした。

「先に言って、僕は確認したじゃないか。どうせついてくるんだろうって」
「まぁ、言われたな?」
「実は、君たちには、マサル君とやらを守って欲しいんだ。その役目をお願いしたい」
「はぁ? ちょ、それどういう意み――」
「彼、まだ近くにいるんだろう? 連れて来てくれないかな」

 台詞を遮った宮橋は、腕時計に目を落として、ぼそりと僅かに唇を動かせたが、小さな声だったので、真由たちは何も聞きとれなかった。三鬼が苛立ちを露わに「お前が署で保護っつったんだろうが」と愚痴るそばで、藤堂が「確認してきますッ」と走って行く。