先頭に立っていたのは、班をまとめている二年下の後輩刑事、佐藤である。宮橋の捜査には何度も関わっていて、全員が彼の逆鱗に触れた経験を持っていた。

 三鬼が両眉を上げて、思わず佐藤に言葉を掛けた。

「お前ら、全部聞いてたのか?」
「すみません、三鬼さん。藤堂と橋端が向かうのが見えて、もしかして何か、宮橋さんの方で動きが出たのかな、と……」
「……いや、そのほうが早い。あいつの事だから、聞かせたくない話だったら最初っから追い出していただろうしな」

 まるで自分に言い聞かせるような声量で言い、三鬼が仏頂面をそらして、宮橋へと視線を移した。全員が、それにつられるようにして目を向ける。

 宮橋は、佐藤と目が合ったところで、指示を続けた。

「容疑者を連行するための車を、近くに一つ用意させておいてくれ。それから、十五番地の角に『無人のパトカー』を一台、停めておくんだ」
「十五番地? えぇと、はい、分かりました。鍵はどうします?」
「鍵は掛けていても構わない。但し、人は近くに置くな。僕が指示しない限り、勝手な行動はしないように。――終わったら、こちらから連絡する」

 どういう理由があっての指示なのだろう、と真由は首を傾げた。指示を聞き届けた先輩捜査員たちが、忙しなく動き出して去っていくのを、不思議そうに見送ってしまう。