しかし真由には、彼がじゅうぶんな職務経験と、その歳月を超えているようには到底思えなかった。

「あの、失礼ですが、宮橋さんはお幾つですか?」
「うん? 僕か? 三十六だ」
「えぇ!」

 彼の容姿もころころと変わる表情も、二十代後半くらいに見える。

 真由が「三十六歳……」と口の中で反芻してしまった時、開いている扉から三鬼が顔を覗かせた。怪訝そうな三十六歳のやや老けた顔が、同期の宮橋を探し出して敵意をむき出しにする。

「お前、今回は邪魔してくれるなよ!」

 三鬼が唐突に、釘を刺すようにそう言い放った。小楠が「またか」というふうに溜息をつく。

 宮橋は直前までの友好モードをどこへやったのか、頬杖をついて煩そうに三鬼を見やった。しかし、ふと思いついたように真由に視線を戻して、彼を指差してこう言った。

「そうだ、いい事を教えてやろう、橋端真由。僕と奴は同期で、同い年だ」
「そうなんですか!?」

 真由は、失礼だという配慮も出来ないまま、思わず声を上げて振り返っていた。